水路

水路の上に
またがり小屋が立つ

水草にあふれ
看板が落ち込み
おおきな鯉が煮える

小屋の中に
台所がみえる

コンクリートは焼けて
脳は溶けていく

分からない言葉で
何か言っている

音色だけで
意味を妄想する

遊女の墓はビルに踏まれ
水は澱み、風は少々

室外機から熱風がはみ出て
ますます、バランスを悪くする

夜になっても
変わらない
白シャツが束になって
歩いてきて逃げる

何故、お酒を飲むのだろう
何故、酔っ払うんだろう

炭鉱には、酒場があり
そこでしか使えない紙を
男たちは惜し気もなく使い果たし
そしてまた、黒いダイヤを掘る
繰り返す
繰り返す

炭鉱主は
その金で
歌詠みの妻に目隠しをする

日本の島と
ボルネオに
西洋風の屋敷をたてる

多少、その装置が
大きくなっただけ

自然の草はいけない
その装置が
うまく、働かないから

自然の種はいけない
その装置が
うまく回らないから

官憲が、玄関を見張っている

アナキスト
知らないうちに、いなくなる

誰かが映写機をまわし
酔っ払って、きゃらきゃら笑う観客

その装置が
今日も回る

水路は澱み
魚は、ほっとかれて太っていく

水路の上のバラックから
卵を溶く音が聞こえる